AI時代に評価される人
AIは、土台になった
AIを、特別な道具だと思っていませんか。新しくて、むずかしくて、覚えた人だけが得をするもの。そう身構えると、力の入れ所がずれます。この記事は、パソコンの設定を人に頼む側の人に向けて書いています。むずかしい言葉は使いません。
いまのAIは、電気や水道に近いところまで下りてきました。電気にくわしい人が偉いわけではありません。電気を使って何を作るか、誰に届けるかで差がつきます。AIも、同じ場所に来ています。
調べて分かったことを先に言います。これまでは「AIを使うと伸びる」と思われていました。ところが実際は逆でした。伸びる人が、たまたまAIも使っていたのです。「使いこなしが目的」ではなく「成果の出し方が先」。「AIは特別な道具」ではなく「AIは水道や電気と同じ」。前提が、まるごと入れ替わります。
この入れ替わりを、一枚にまとめたものがこちらです。左が思い込み、右が実際の順番です。

AIは、目的ではありません
水道を飲んでも、成果は出ない
水道が家に引かれても、それだけで料理は出てきません。何を作るかを決めた人が、水を使うだけです。AIも同じで、使った時間の長さは成果になりません。分かったことを、three つに分けると次のようになります。
- AIを使ったから成果が出た、という関係はありませんでした。
- ただし、まったく使っていない人は、成果が伸び悩んでいました。
- 手で書いた紙で相手が納得するなら、それで十分だということです。
ここでつまずく人が多いので、注意点をひとつ。「AIで何かしなければ」と考え始めると、手段から入ってしまいます。そうなると、道具を試すことが仕事になり、相手に届けるものが薄くなります。先に決めるのは、誰に何を通したいか。それが決まってから、AIを使うかどうかを考えます。使わない判断も、立派な判断です。

自分ひとりで終わる仕事は、もう少ない
いまの働き方が、そもそも変わっています。今は仕事の87%が、人の手を借りないと終わりません。15年ほど前は、半分くらいは自分だけで終わっていました。資料を作り、判子をもらい、出して終わり。そういう仕事が減りました。
自分の力だけで終わるのは13%だけです。だから、速く処理する力より、人に動いてもらう力が効きます。ひとりで抱えて三日で仕上げるより、二人に頼んで半日で形にするほうが、結果として前に進みます。
評価されるのは、速い人より、頼める人です。頭の良さより、気持ちが通じることが先に来ます。「この人に言われたら、まあやるか」と思ってもらえるかどうか。そこが土台になります。

評価は、成果より手前で決まる
良い場所——大きな取引先や大事な仕事は、誰かが任せてくれるものです。自分で勝手に始められる仕事は、ほとんどありません。
渡す側がいる——任せる人が、この人ならと思うかどうか。そこで先に決まります。つまり、成果を出す機会そのものが、人から配られています。
だから信頼——成果を出す前に信頼を集めた人が、成果の出る場所をもらえます。順番は、信頼が先で成果が後です。ここを取り違えると、「成果を出せば認めてもらえるはず」と待ち続けることになります。

失敗のほうを、集める
成功のまねは効かない、と分かりました。ここからが、この回でいちばん使える話です。
成功は、その人とその場だから起きたものです。あの人だからできた、あの会社だからできた、で終わります。本やセミナーで聞いた成功談をそのまま持ち帰っても、自分の職場では形が合いません。
いっぽう失敗は、誰にでも同じ形で起きます。締め切り前日に共有していなかった。相手の上司の好みを知らなかった。だから、まねして避けることができます。
優秀な人は、成功率ではなく失敗する率を下げています。毎回同じ手順でやると、出来のぶれが減ります。当たりが少なくても、大外れがなければ、任される回数は増えていきます。

落ちた分を、そのままにしない
5つ出す——案を5つ出し、2つ通って3つ落ちた。ふつうはここで終わりますが、ここからが本番です。
3つを調べる——なぜ落ちたのかを、一つずつ確かめます。通った2つは放っておきます。確かめ方は簡単で、決めた人に「今回、どこが引っかかりましたか」と一言聞くだけです。聞きにくければ、会議の言い回しを思い出して書き留めるだけでもかまいません。
相手ごとに覚える——この人は色数の多い図が苦手、この人は手書きがいい。そうやって分けて出します。落ちた理由は、たいてい中身より見せ方にあります。

AIに渡すものを、入れ替える
ここでAIの出番です。やることは一つ、渡し方を変えるだけ。うまくいった話ではなく、落ちた理由のほうを書いて渡します。「この相手には、字が多い資料は通らなかった」「前回は、費用の話を後ろに置いたら止まった」。そういうメモを、頼むときに一緒に貼りつけます。
これは、新しく入った人に引き継ぎ書を渡すのと同じです。うまくいった例だけ見せても、その人は同じ落とし穴に落ちます。落ちた穴の場所を教えるほうが、はるかに役に立ちます。
AIには、失敗の記録を渡す
- 多くの人は、うまくいった例や自分の得意な型を渡しています。
- 成果を出す人は、落ちた案とその理由のほうを覚えさせていました。
- 失敗の記録は世に出ないので、自分にしかない材料になります。
成功談はどこにでも転がっているので、AIはもう知っています。あなたの職場で落ちた三つの理由は、世界中でどこにもありません。そこだけが、他の人と差がつく持ち物です。

1つに決めない
使い分けの話です。まず2つ目を用意します。1つだけだと、答えが片寄ります。AIは、聞かれたことに自信たっぷりに答える性質があるので、その一つを正解だと思い込むと危ないのです。
むずかしいことはしません。ふだん使っているものに加えて、もう一つ別のものを開いておくだけです。無料で使えるものが複数あります。
そのうえで、確かめ方を一手間入れます。片方の答えをもう片方に見せて、反対の意見を出してもらう。「この案の弱いところを三つ挙げて」と頼むだけです。二つの答えが食い違ったところに、たいてい落とし穴があります。

AIが持っていない、3つのもの
どこまで任せてよいかの境目は、この三つで分かります。
欲求——良く見せたい、認められたい。そう思う気持ちがありません。だから、放っておくと当たりさわりのない答えが返ります。
経験——その場にいないので、人から聞いた話しか持っていません。あの会議室の空気は知りません。
肉体——体がないので、出向いて頭を下げることができません。ここは、どうやっても代わってもらえません。

だから、頼み方と足で差がつく
頼むときは、どうしたいかを先に書く。AIは望みを持たないので、こちらが望みを言葉にします。「資料を作って」ではなく「来週の会議で、部長に予算を通したい。だから一枚にまとめたい」と書きます。
新しく入った人に頼むのと同じです。誰に見せる、何を通したい。そこまで書くと返りが変わります。逆に、新人に言わないようなこと——背景も相手も伏せた頼み方——をすると、返ってくるものも新人以下になります。
経験は、自分で取りに行くしかありません。謝りに行く日は腕時計を外す。そんな勘所は、現場でしか手に入りません。ここだけは、明日も自分の足で稼ぐ部分です。
最後は、人と人
情報より先に、気持ちを渡します。巻き込みの話です。
何よりも誰と——どんな仕事かより、誰とやるかで人は動いています。内容が地味でも、あの人と組むならやる。そういう決まり方を、みんなしています。
先に気持ち——しんどい、うれしいと言える間柄になってから、話が通ります。連絡だけを回して動いてもらおうとすると、返事が遅くなります。
だから会う——顔を合わせて話す場面が、いまあらためて効いています。文字はAIでも書けますが、隣に座ることはできません。

反応と、決定を分ける
会議での癖を、三つだけ直します。
反対意見にも、まずうなずく。うなずくことと、賛成することは別です。ここを混ぜないでください。混ぜている人は、うなずけないので、相手に「聞いていない」と受け取られます。
声をかけられたら、まず「もちろん」。一度受けてから、明日でもいいですかと返せば、関係は崩れません。最初に「今は無理です」と言うと、断られたのは用件ではなく自分だ、と相手は感じます。
案を出す場では、良し悪しを言わない。全部出しきってから、費用や実現できるかを調べます。出しながら削ると、いちばん面白い案が最初に消えます。

まとめ
明日から、この5つだけ持ち帰ってください。全部やらなくてかまいません。上から一つずつで十分です。
- AIを使うことが目的ではない。成果の出し方が先
- 自分だけで終わる仕事は13%。だから人を巻き込む
- 成功例ではなく、落ちた理由を集めて渡す
- AIは2つ以上。片方の答えをもう片方で確かめる
- 反対意見にもうなずく。反応と決定は分ける

AI図書館より。
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