Won. Studio

AIに作らせる開発術

開発約8分

まず、何をする話か

この回でお話しするのは、自分では一行も書かずに、道具づくりをまるごとAIに任せるやり方です。プログラムの知識がなくても、頼み方さえ分かれば形になります。逆に言えば、ここでいちばん大事なのは書く力ではなく「頼む力」です。うまくいかない人の多くは、頼み方でつまずいています。

前提を一つ置かせてください。人が書いた部分をあとからAIに手伝わせる話ではありません。最初から最後まで、作るのはAIです。人がやるのは三つだけ。何を作るかを決めること、できたものを見ること、道を外れたときに引き戻すこと。この三つに集中できるように、まわりを整えていきます。

まず作業場を開きます。AIに指示を出して、そのまま形にしてもらうための場所です。ここでは一つの道具を使って進めますが、Windsurf(同じくAIに作らせるための道具)でも手順は変わりません。画面の並びが違うだけで、やることは同じだと思ってください。下の写真で、指示を書く欄と、できたものが並ぶ欄の位置を見ておいてください。

作業場を開く
指示を書く欄と、できた物が並ぶ欄

次に、任せるAIを選びます。ここで見るのは「物知りかどうか」より「道具を上手に使えるかどうか」です。書類を開く、書き足す、実際に動かして確かめる。この地味な積み重ねをきちんとできる相手のほうが、結果的に早く形になります。ここではClaude(文章や手順を扱うAI)の、じっくり考える型を選んで使っています。

頼む前に、指示書を書かせる

いちばんやりがちな失敗は、思いついたまま「こんなものを作って」と一言で頼むことです。頭の中にある「こんなもの」は、たいてい自分でも半分しか言葉になっていません。半分の説明で作らせると、残りの半分はAIが勝手に埋めます。そして出てきたものを見て「そうじゃない」と言い、また作り直す。この往復がいちばん時間を食います。

そこで、頼む前に三つの手順を挟みます。順番を入れ替えないでください。

  • 作りたいものを、別のAIに書き出させる
    思いつきのまま頼まず、まず詳しい指示書を作ってもらいます。「これから◯◯を作りたい。作る人が迷わないように、詳しい指示書にしてください」と頼むだけで構いません
  • その指示書を、自分で読み直す
    違うところは直します。ここでの手間が、あとの作り直しをまるごと減らします
  • 指示書をそのまま貼って、作らせる
    まとめて渡すと、AIは全体像を持ったまま作りはじめます
頼む前の3手順
順番を入れ替えない三つの手順

手順1の画面が下の写真です。特別なことはしていません。作りたいものをふつうの言葉で伝えて、詳しい指示書にしてもらっているだけです。コツは、細かく整った日本語で伝えようとしないこと。「誰が使うか」「その人が何をしたいか」「終わったらどうなっていてほしいか」。この三つが入っていれば、あとはAIが形を整えてくれます。

指示書を書かせる
ふつうの言葉で伝えている入力欄

手順2の読み直しが、実は一番の勘どころです。ここでつまずく人はたいてい、長い指示書を見て面倒になり、読まずにそのまま渡してしまいます。全部を読む必要はありません。自分が「たしかにそうしたい」と言い切れないところだけ探して、そこを直せば十分です。上司に渡す前の下書きを一度見直すのと同じ感覚で構いません。

手順3は、その指示書をまるごと貼りつけるだけです。ここで小分けにして少しずつ伝えると、AIは全体の形が分からないまま作りはじめ、あとで大きく作り替えることになります。長くても、まとめて渡す。これが早道です。

毎回言う注意は、書いて置いておく

この回でいちばんの発見をお伝えします。使っていると、同じ注意を何度も口で言うことになります。「そこは触らないで」「勝手に作り替えないで」。毎回言うのは大変ですし、言い忘れた回に限って事故が起きます。

毎回言う注意は、書いて置く

やることは単純です。毎回言っている注意を、一枚の文書にまとめて置いておく。すると、AIは仕事を始めるたびにそれを読みます。新しく入った人に渡す「うちの決まりごと」の紙と、まったく同じ役目です。人が入れ替わっても紙は残る。それと同じで、会話が変わっても文書は残ります。

置いておく注意は、大きく二つに分かれます。前半は作り方について、後半はごまかしを止めるためのものです。

  • 勝手にやり方を変えない
    うまくいかないと、AIは別のやり方に丸ごと作り替えます。それを止めます
  • 同じ処理を二重に作らない
    すでにある部分を探させます。無いと思い込んで、増やしてしまうからです
  • 頼んだところ以外は触らない
    一か所を直すと関係ない所が三つ壊れる。それを防ぐ言い方です
  • にせのデータでごまかさない
    失敗したのに仮の中身を入れて、成功したことにする。これを禁じます
  • 一つの書類が長くなったら整理する
    大きくなってから直すと壊れます。太る前に分けさせます
  • 大事な設定の書類は書き換えない
    使い回しの合言葉が消えて、入れ直しになるからです
置いておく注意・前半
作り方についての三つの言いつけ

この中で効き目が大きいのは、三つめの「頼んだところ以外は触らない」です。一か所を直してもらったら、関係ないはずの場所が壊れていた。この経験をすると、頼むのが怖くなります。先に書いて置いておけば、その怖さがかなり減ります。

次に、その文書をどこに置くかです。置き場所を間違えると、書いたのに読まれません。作業場ごとに「ここに置いた文書は毎回読む」と決まった場所があります。下の写真でその場所を確かめてください。迷ったら、作業場のAIに「決まりごとの文書はどこに置けばいいか」と聞けば教えてくれます。

注意書きの置き場所
毎回読まれる決まった置き場所

置く前と置いた後で、何が変わるか。これまでは、同じ注意を何度も口で言っていました。これからは、文書が代わりに言ってくれます。これまでは、うまくいかないと勝手に全部を作り替えていました。これからは、元のやり方のまま直そうとします。これまでは、直すたびに別のところが壊れていました。これからは、頼んだところだけが直ります。派手な変化ではありませんが、毎日効いてきます。

場所を三つに分ける

もう一つ、先に決めておくと事故が減ることがあります。作業する場所を三つに分けることです。混ぜたまま進めると、あとで取り返しがつかなくなります。

作る場所

自分がいじって試す場所です。壊れてもかまいません。むしろ、ここでどんどん壊して確かめてください。

確かめる場所

ちゃんと動くかを自動で調べる場所です。仮の中身を使ってよいのは、ここだけです。

お客さんの場所

実際に人が使う場所です。ここに仮の中身が混ざると事故になります。「にせのデータでごまかさない」という注意が効いてくるのが、まさにここです。

場所を三つに分ける
三つの場所の役わりの違い

毎日の進め方

小さく頼んで、そのつど確かめる

頼み方の基本は、欲張らないことです。一度に大きく頼むほど、うまくいかなかったときにどこが悪いのか分からなくなります。小さな一つを足したら、その場で動くか確かめる。遠回りに見えて、この繰り返しがいちばん速いです。作ったものを人に見せる場所への反映まで、同じやり方で頼めます。

会話が長いと質が落ちる

見落としやすい落とし穴です。AIに渡せる情報の量には上限があります。渡すほど賢くなりますが、多すぎると、あるところから急に的外れになります。作業場が「新しい会話にすると良くなる」と教えてくれることがあるので、それが切り時です。ただし新しくすると前の話は消えます。必要な分だけ貼り直してから続けてください。

確かめる用意も、いっしょに作らせる

ここでいう確かめる仕組みとは、動くかどうかを自動で調べる用意のことです。三つだけ覚えてください。一つ、部品ごとより、人が触る通りに画面を順に押していく確かめ方が役に立ちます。二つ、何かを作らせたら、確かめる用意も同時に作らせます。後から頼むと忘れます。三つ、うまく通らなかったときの直し方を見ておきます。確かめ方のほうではなく、本番の側をいじって無理やり通すことがあるからです。

どこまで自動でやらせるか

設定は三段階から選べます。毎回とめて人が許すやり方は安全ですが、そのたび手が止まります。全部を自動で走らせるやり方は速いですが、公開まで勝手に進めてしまうので、人が使うものには向きません。ふだんは真ん中、危なくない所だけ自動にして、重いものは確認する設定が無難です。

どこまで自動でやらせるか
三段階のうち真ん中が無難

戻せるようにしておく

最後の保険です。変更のたびに記録を残す場所を用意しておきます。おかしくなったら前に戻すだけで済むので、思い切って任せられるようになります。これがないと、こわごわ頼むことになり、けっきょく遅くなります。

待ち時間は前提にする

一回頼むと、終わるまで二分から十五分ほどかかります。ずっと見ている必要はありません。頼んだら別の仕事に移り、戻ってきてできたかを見る。慣れてきたら、別々の作業を同時に進めて最後に合わせる、という手もあります。遅いことに苛立たず、待ち時間ありきで一日の組み立てを考えるのがこつです。

待ち時間の使い方
一回2〜15分、離れてよい

まとめ

明日、この順でやれば形になります。難しいことは一つもありません。

  • 作る前に、詳しい指示書をAIに書かせて、自分で読み直す
  • 毎回言っている注意を一枚の文書にして、決まった場所に置く
  • 頼みごとは小さく分けて、そのつど動くか確かめる
  • 会話が長くなったら、必要な分だけ貼り直して新しく始める
  • 変更のたびに記録を残し、いつでも前に戻れるようにしておく

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