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フィジカルAI入門

基礎約9分

AIが外へ出る

画面の中から、現実世界で動く存在へ。ここが、いま起きている大きな変化です。これまで多くの人が触れてきたAIは、文章を書いたり、質問に答えたりする、画面の中の道具でした。ですが今は、見て、動いて、運んで、止まって、人の代わりに現場で仕事をする方向へ広がっています。

たとえば、事務の仕事で考えると分かりやすいです。文章を読んで答えるだけなら、引き継ぎ書を読んだ新人に近いです。けれど、実際に倉庫へ行って荷物を持つ、工場で部品を運ぶ、畑で収穫するとなると、読むだけでは足りません。周りを見て、手を動かして、失敗しないように調整する力が要ります。

フィジカルAIとは

まずここだけ

AIが現実世界で動き、仕事をする

これがフィジカルAIです。名前だけ聞くと人型ロボットを思い浮かべがちですが、そこだけに限りません。大事なのは、形ではなく、現実の場所で働くことです。車のように移動するものもあれば、工場の機械のように決まった場所で動くものもあります。

  • 人型ロボットだけの話ではない
  • 車・ドローン・工場・農業・介護にも広がる

活躍する場所

ロボットだけではない

活躍する場所は、私たちが思う以上に広いです。しかも、どの場所でも共通しているのは、周囲の様子を見て、その場に合わせて動かなければならないことです。事前に決めた通りに動くだけでは、現実では困る場面が多くあります。

移動

自動運転の車やドローンが周囲を見て動く。道に人がいる、風が強い、障害物がある。こうした変化に合わせて、安全に進む必要があります。

ものづくり

工場のロボットが作業を判断して動く。部品の置かれ方が少し違うだけでも、つかみ方や動く順番を変えなければならないことがあります。

暮らし

農作業や介護など人のそばでも働く。相手が人であるほど、乱暴に扱えません。速さだけでなく、やさしさや安全も大切になります。

足りないのは経験

現実で動くAIには、行動のお手本が必要です。ここが、画面の中のAIと大きく違うところです。文章の仕事なら、たくさんの文を読んで学びやすいです。けれど、現実での動きは、読むだけでは身につきません。

人に仕事を教える場面でも同じです。書類の整理なら、見本の文章や手順書で教えやすいです。ですが、壊れやすい品を箱に詰める作業は、持ち方や力の入れ方まで見せないと伝わりません。フィジカルAIも、それとよく似ています。

学ぶ材料が違う

文章のAIとの違い

これまでは本や文章から学ぶ場面が中心でした。これからは人の動きから学ぶ場面が増えます。

これまではネットに材料が多くありました。これからは行動データが少なく、集めるところから始める必要があります。

これまでは知識を答えることが主でした。これからは現実で体を動かすことが求められます。

最大の壁はデータ

フィジカルAIの弱点

現実の動きを学ぶ材料が、まだ足りない

文章や画像と違い、行動のお手本は集めにくいです。人が実際に動いて、その動きを記録し、それを整理して初めて教材になります。しかも、ただ動画を撮るだけでは不十分なことがあります。どこを見ていたか、どのくらいの力で持ったか、どの順番で動いたかまで分かると、はじめて役に立つ場面が多いからです。

さらに、物の重さや摩擦など、現実の条件も覚える必要があります。机の上の文章なら重さは変わりませんが、現物の作業では、箱の中身が違えば持ち方も変わります。床が滑りやすければ、進み方も変えないと危険です。

現実には法則がある

動けるだけでは足りない

重さ

物によって重さが違い、必要な力も変わる。軽い物のつもりで強く握れば壊すかもしれませんし、重い物を軽い物のつもりで持てば落とすかもしれません。

手触り

滑りやすさが違えば、持ち方も変わる。紙の束、金属の部品、濡れた容器では、同じつかみ方では安定しません。

動き

投げる・運ぶなど、動作ごとの経験が要る。運ぶだけならできても、決まった向きにそろえて置くとなると、別のお手本が必要になります。

誰から学ぶかも重要

上手な人の動きが教材になる

まず人の動きを記録する。実際の作業を、AIが学べるお手本として残します。ここで大切なのは、普通の作業風景として流してしまわないことです。何をしている場面なのか、うまくいったのか、失敗したのかが分かる形で残す必要があります。

熟練者のコツを集める。上手な人ほど、質の高い行動のお手本を作れます。本人は当たり前にやっていても、置く前に向きを確認する、少し持ち上げて重さを見る、といった細かな工夫が入っています。そうしたコツが、あとから大きな差になります。

現場ごとに蓄積する。工場や農業など、仕事ごとに経験をためていきます。ある現場でうまくいった動きが、別の現場でそのまま通用するとは限りません。仕事の種類が違えば、集めるべきお手本も変わります。

製造業が強みになる

工場と熟練者の経験が、新しい資源になります。これまで現場で当たり前に積み重ねてきた知恵が、フィジカルAIの時代には非常に価値の高いものになります。ただ設備があるだけではなく、日々の作業と、その作業を上手にこなす人がいることが強みです。

現場そのものが資産

フィジカルAI時代の強み

工場は、実際の作業があるから動きのお手本を作れます。産業は、自動車・半導体・造船など幅広い現場を持ちます。熟練者は、長年のコツをAIに教える役割を担います。つまり、現場・仕事の種類・人の経験がそろうほど強くなります。

競争力の中心

機械だけを買っても足りない

質の高い行動データを集める力が重要

大切なのは、高価な機械を置くことだけではありません。現場を持つことと、データにする仕組みの両方が要ります。また、熟練者がAIの先生になる、という見方も重要です。現場の人が置き去りになるのではなく、むしろ中心になります。

目指すのは工場全体

一台のロボットから次へ

注文から生産を考える。必要なものを見て、生産の流れを組み立てる。単に目の前の作業だけでなく、何をどの順で作るかまで考える段階へ進みます。

複数のロボットへ仕事を出す。工場内の機械に、それぞれの役割を割り振る。一人の作業者に口頭で仕事を振るように、全体を見ながら動きを配分するイメージです。

品質まで確かめる。完成品や設備の状態まで確認する。作ったら終わりではなく、きちんとできているか、機械に無理が出ていないかまで見ます。

工場全体で判断する。一連の仕事をまとめて調整する。ここまで進むと、一台ずつの賢さではなく、現場全体のつながりが価値になります。

AIを持つ意味

便利さだけでなく、使い続けられる力も必要です。今すぐ便利ならそれでよい、では不安が残ります。仕事で使う以上、必要なときに止まらないこと、使えなくなったときに代わりを考えられることが大切です。

海外任せの弱点

使えて当然とは限らない

利用制限

最新のAIが使えなくなる可能性がある。使いたい時期に使えないと、試すことすら難しくなります。

研究停止

頼っていたAIが止まると仕事を続けにくい。社内に知識や代わりの方法がないと、そこで手が止まってしまいます。

競争差

古いAIしか使えなければ成果にも差が出る。同じ人が同じ努力をしても、使える道具の差で結果が変わることがあります。

自分でも作れる力を

独自AIを持つ理由

必要なAIを、自分たちでも作れる力を残す

  • すべてを海外のAIだけに頼らない
  • AIそのものと、使いやすいサービスの両方が必要

ここでいう「自分たちでも作れる力」とは、必ずしも全部を自前で一から作るという意味ではありません。必要な部分は自分たちで考え、選び、乗り換え、現場に合わせて使える力を持つことです。

使える人を増やす

技術競争と同時に、AI格差への備えが必要です。新しい道具は、早く触れた人ほど慣れていきます。逆に、難しそうだからと遠ざけると、差は少しずつ広がります。ここで大切なのは、専門家になることではなく、まず使える側に入ることです。

ITもAIも触ったことがない人ほど、最初に身構えやすいです。ですが、最初から深い仕組みを知る必要はありません。洗濯機の中の動きを全部知らなくても使えるのと同じで、まずは何に役立つかを知ることが先です。

新しい格差が生まれる

使うかどうかだけではない

これまではAIを使わない人が多くいました。これからはAIを日常で使う人が増えます。

これまでは触れる機会が少ないこと自体が普通でした。これからは試す機会が多い人ほど、使いどころを早く見つけます。

これまでは基本的な使い方だけでも差になりました。これからは高度な使い方まで進める人との差が広がりやすくなります。

最初の一歩を広げる

AIを特別な道具にしない

触れる

まず一度使って、できることを体験する。合うか合わないかは、触ってみないと分かりません。

学ぶ

難しい技術より、生活や仕事から試す。会議メモの整理、言い回しの直し、説明文の下書きなど、結果を見て判断しやすいものが向いています。

参加する

年齢に関係なく、作る側にも回ってみる。現場の人が「こういう使い方なら助かる」と言えること自体が価値です。

明日からできること

変化を待つより触ってみる

1. 気になることをAIに聞く。仕事でも趣味でも、自分に近いテーマから始める。難しい質問である必要はありません。いつも人に聞いていることを、そのまま聞けば十分です。

2. 一つの作業を任せてみる。文章の整理など、結果を確認できる仕事で試す。最初から大事な判断を任せないことが大切です。下書き、一覧づくり、言い換えのように、人が最後に見直せる仕事から始めましょう。

3. 自分の使い方を育てる。使いながら、どこで役立つかを見つけていく。うまくいかなかった時に「使えない」で終わらせず、「何を頼めばよかったか」を少し変えて試すのがコツです。

やってはいけないのは、最初から全部を任せることです。特に、お金、契約、人事、安全に関わることは、そのまま使わず必ず人が確認してください。便利さよりも、間違えた時の困り方が大きい仕事ほど慎重に始めるべきです。

まとめ

フィジカルAIの要点

AIは画面の中から現実世界へ広がります。フィジカルAIは現実世界で動くAIです。最大の課題は行動データの不足です。熟練者と製造現場が重要な資産になります。そして、AIを自分たちでも作れる力が必要です。まず使うことがAI格差への第一歩です。

最後に

AI図書館

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AIを仕事で使う話を、やさしく1本ずつ出しています。次の回もここで会いましょう。

  • 今日の仕事で、AIに聞けそうなことを一つ探す
  • 下書きや整理のような、確認しやすい作業を一つ任せてみる
  • うまくいった頼み方と、失敗した頼み方をメモに残す
  • 自分の職場で、人の動きやコツが価値になる場面を考えてみる

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