AIエージェント入門
まず意味をつかむ
最初に押さえたいのは、ただ答えを返すだけのAIとの違いです。ふつうの会話型のAIは、聞かれたことに文章で返すのが中心です。いっぽう今回の主役は、必要なら外の道具も使いながら、仕事を前に進める形です。
たとえば、社内の手引きを探して答える、足りない資料があれば探し直す、答える前に内容が合っているか見直す。こうした一歩先の動きが入ると、ただの返事係ではなくなります。まずはこの違いだけつかめれば十分です。
出発点
AIエージェントという言い方は、答えるだけでなく、必要な作業を選んで進めるしくみ、という意味で使われます。
道具を使い分けて進めるAI
- 質問に答えるだけでなく、必要な作業を自分で選ぶ
- 状況が変わっても、次の手を調整しやすい
身近なたとえなら、新しく入った人に仕事を頼む場面に近いです。「この問い合わせに返事して」で終わる人もいれば、「まず前回の例を探し、足りなければ担当表を見て、必要なら確認してから返す」人もいます。後者の働き方が、このしくみに近いです。
何が違う?
従来の自動化との比較で見ると、いちばんの違いは、最初から全部の手順を決め打ちしなくてよい点です。これまでの自動化は、引き継ぎ書どおりに進めるのは得意でした。しかし途中で想定外が出ると止まりやすい弱さもありました。
これからの形では、目的を見て手を変えます。資料が見つからなければ別の探し方に変える、聞き方があいまいなら言い換える、といった動きができます。人が毎回細かく指定しなくても進みやすいのが特徴です。
『エージェント的』とは
人の手をどこまで減らせるかを見る言葉です。立派な名前に聞こえますが、要は「次に何をするかを毎回人が決めなくてよいか」です。
自分で進める
状況を見て、次の作業を選びやすい形です。資料を探すのか、そのまま答えるのかを、毎回人が指示しなくても決めやすくなります。
途中で直せる
うまくいかない時に、別の手順へ切り替えやすいのも大事です。一度の失敗で終わらず、探し直しや聞き直しができます。
任せる範囲が広い
人が毎回細かく指示しなくても進めやすいので、任せられる範囲が広がります。ただし、何でも丸投げしてよいという意味ではありません。あとで出てくる線引きが重要です。
最低限の3役
仕組みはこの3つで見ると整理しやすくなります。難しく考えず、職場の役割分担だと思ってください。
考える役
質問を読み、何をするかを決めます。まず検索が必要か、すぐ答えられるかを見ます。
道具を使う役
検索や計算など、外の作業を呼び出します。人で言えば、必要な台帳や手引きを取りに行く役です。
覚える役
直前の話や前回のやり取りを保ちます。これが弱いと、さっき決めたことを忘れたような不自然な動きになります。
設計の選び方
ここからは、どう組むかの話です。一人で回すか、役割分担するか。まずはこの見方だけで十分です。
最初から大きく作ると、動いた理由が追えなくなります。慣れていないうちは、小さく始めて、どこで迷うかを見ながら広げるのが安全です。
まずは2択
単独型と分担型があります。単独型は、一つの流れで最後まで進める形です。小さな仕事に向いていて、作りやすく、動きも追いやすいです。
分担型は、調べる役、まとめる役、見直す役のように分ける形です。複雑な仕事に向きますが、設計は重くなり、やり取りが増えるぶん遅くなりやすいです。最初の学習では、単独型から入るほうがつまずきにくいです。
分担型の基本3パターン
最初はこの3つで足りると考えると整理しやすいです。
同時に進める
別々の作業を並行して進め、あとで集めます。たとえば、複数の資料を同時に当たる形です。速く見えますが、重複もしやすいです。
順番に渡す
前の人の結果を次の人へ渡して仕上げます。下書きを作る人、直す人、最終確認する人、という流れに近いです。
入口で振り分け
質問の種類で担当を分けて、無駄を減らします。料金の質問はこの流れ、手順の質問は別の流れ、と分ける考え方です。
組織の形でも変わる
横並びか、リーダー型かでも設計は変わります。これは実際に動かしたときの分かりやすさに直結します。
横並び型
皆で案を出す仕事に向きます。ただし、同じことを何度も調べたり、似た作業が重なったりしやすいです。
リーダー型
流れが明快で、段階作業に向きます。誰が次を決めるかがはっきりしているので、最初の学習では扱いやすいです。ただし、一か所に判断の負担が集まりやすくなります。
現実的な選び方
まずはリーダー型で小さく作り、必要なら広げるのがおすすめです。いきなり横に広げると、どこで失敗したのか見えにくくなります。
自動化しすぎない線引き
重要な場面は人を残す。ここはとても大事です。便利だからといって、全部を自動で通すと危ない場面があります。
人の確認を入れる
個人情報や重要判断の前では止めます。たとえば、送信前の確認や、条件変更の最終判断は人が見るべきです。
道具の共有に注意
同じ道具を同時に使うと、ぶつかって乱れやすくなります。人でも、一つしかない台帳を何人も同時に書き換えると混乱します。それと同じです。
答えのズレに注意
同じ元情報でも、見方が違うと結論が割れます。だからこそ、最後にまとめる役や、人の確認が効きます。やってはいけないのは、もっともらしい文章だけを見て、そのまま通すことです。
検索つきAI
ここからは、RAGという言い方もされる、文書を探してから答える形の話です。社内の手引き、よくある質問、説明文などを探して、それをもとに答えるので、思いつきの返事になりにくいのが利点です。
仕事で使うなら、この形が入り口になりやすいです。理由は単純で、答えの根拠を手元の文書に寄せやすいからです。とくに、言い回しが大事な案内や、決まった手順の説明に向いています。
ここが実用差
検索つきAIの要点は、一回探して終わりにしないことです。
探す→確かめる→直して再検索
見つけた文書が弱ければ、質問を言い換えて探し直します。この一往復があると、答えの質が上がりやすくなります。人でも、最初の検索で欲しい資料が出なければ、言葉を変えて探し直します。それと同じです。
つまずきやすいのは、「検索したのに答えがずれる」場面です。原因は、探した文書が質問に合っていない、または広すぎることが多いです。ここを見直す仕組みがあると、実用で差が出ます。
動きは4段階
検索つきAIの流れは、四つの段階で考えると理解しやすいです。
検索が要るか決める
すぐ答えるか、資料を探すかを先に分けます。毎回検索すると遅くなり、逆に毎回直答すると根拠が弱くなります。
文書を探して集める
必要なページや資料だけを持ってきます。全部読むのではなく、関係がありそうな部分を絞るのが目的です。
使える文書か確かめる
質問に合っているかを見直します。言葉が少し似ているだけで、実は別の話ということもあります。
弱ければ聞き方を直す
質問を言い換えて、もう一度探します。ここを省くと、「探したのに見つからない」で終わりがちです。
LangGraphで組む理由
LangGraphは、手順を線でつなぐ道具です。難しく見えますが、考え方は単純です。仕事の流れを小さな作業に分け、条件に応じて次の行き先を変えられるようにします。
作業箱
一つ一つの処理を、小さな箱として分けられます。たとえば、入口で判断する箱、検索する箱、答えをまとめる箱、という見方です。
つなぎ線
条件しだいで、次の箱を変えられます。資料が弱ければ探し直しへ、十分なら回答へ、という分かれ道を作れます。
共通メモ
途中の情報を持ったまま次へ渡せます。質問文、見つけた資料、途中の判断を引き継げるので、流れが切れにくくなります。
材料を集める
前半の手順では、まず答えのもとになる文章をそろえます。ここが空だと、検索つきの形にしても探す先がありません。
OpenAIの利用準備
OpenAIは、文章を読んだり、まとめたりするための道具です。利用キーを読み込み、実行できる状態にするのは、この道具を使えるようにするためです。自分で設定しない人でも、「使う許可が通っているか」は確認点になります。
WebBaseLoaderで読込
WebBaseLoaderは、Webページの本文を取り込むための道具です。四つのWebページを文書として取り込むのは、あとで探す材料を集めるためです。
まず材料をそろえる
ここで大事なのは、最初から完璧な量を集めようとしないことです。少なすぎても答えられませんが、多すぎても探しにくくなります。まずは答えに使いたい文書だけをそろえるのがコツです。
文書を探せる形にする
中盤の手順では、集めた文章を、そのままではなく探しやすい形に整えます。長い文書を丸ごと持っているだけでは、必要な部分を見つけにくいからです。
RecursiveCharacterTextSplitter
RecursiveCharacterTextSplitterは、長い文章を小分けにして扱いやすくする道具です。一つの大きな資料を、必要な段落ごとに切り分けるイメージです。
InMemoryVectorStoreへ保存
InMemoryVectorStoreは、小分けした文を一時保存し、似た内容を探せるようにする入れ物です。名前は難しく見えますが、要は「関係ありそうな文を探しやすくする保管場所」です。
検索の土台を作る
ここでの目的は、必要な断片だけを取り出せる状態にすることです。つまずきやすいのは、切り方が大きすぎて関係ない文まで混ざること、逆に細かすぎて意味が切れることです。最初は短すぎず長すぎない形を意識します。
検索係を用意する
後半の手順では、探せる状態になった文書を、実際に呼び出せる形にします。
retriever toolを作る
retriever toolは、探した文を返す検索係です。道具として呼べる形にすることで、「必要なら探す」という流れに組み込めます。
入口の判断箱を作る
そのまま答えるか、検索するかを決める箱を作ります。ここがないと、簡単な質問にも毎回検索し、動きが重くなります。
質問だけなら直答
探さなくてよい内容は、その場で返します。たとえば、あいさつや、今ある会話だけで分かる確認です。何でも検索に回すのは、やってはいけない設計の一つです。
仕上げの3箱
答えの質を上げる部分です。検索つきの形が実用になるかどうかは、ここで決まりやすいです。
文書の合い方を確かめる
質問に合う文かを見て、使うか戻すかを決めます。見つかったという事実だけでは足りません。答えたいことに本当に合っているかが大切です。
弱ければ質問を書き直す
聞き方を言い換えて、もう一度探し直します。人でも、「申込条件」で見つからなければ「利用条件」や「対象者」で探すことがあります。同じ工夫を入れます。
最後に答えをまとめる
使える文書をもとに返答を作ります。この時、文書にないことを言い足しすぎないのがコツです。まとめ役は、上手に書くことより、元の文書から外れないことを優先します。
完成した流れ
LangGraphの組み立てとして見ると、流れはシンプルです。開始して、まず入口で判断します。直答でよいならそのまま返し、必要なら検索へ進みます。
検索のあとで文書確認を行い、合えば回答へ進みます。弱い文書なら、質問を書き直してもう一度検索へ戻ります。この戻り道があることが、単なる検索と違う点です。
仕事で考えるなら、「受付で振り分ける」「資料を持ってくる」「内容が合うか確認する」「足りなければ探し直す」「最後に返事を作る」という流れです。図がなくても、この順でイメージできれば十分です。
今日の結論
作る前に決めることは多くありません。むしろ、最初は決めすぎないほうがうまくいきます。
大事なのは、道具選びまで任せる形なのか、単独型か分担型か、重要判断に人を残すか、検索の再挑戦を入れるか、そしてLangGraphで箱と線と共通メモとして組むか。この骨組みが定まれば、細かな設定はあとから整えられます。
最後に
AI図書館
フォローといいね、お願いします
AIを仕事で使う話を、やさしく一つずつ出しています。むずかしい言葉より、明日試せる考え方を大事にしています。
次の回もここで会いましょう。まずは「ただ答える」から「必要なら探して確かめる」へ、この一歩を持ち帰ってください。
まとめ
- まずは、ただ答える形と、道具を使って進める形の違いを言葉で説明できるようにする
- 自分の仕事で、検索つきの形が向く文書を一つ決める。手引き、案内文、よくある質問からでよい
- 全部自動にせず、人が確認する場面を先に決める。個人情報と重要判断は残す
- 流れは小さく作る。入口判断、検索、文書確認、答えのまとめ、この順だけをまず考える
- うまく見つからない時は、文書ではなく聞き方を直して再検索する発想を持つ
コメント
- まだコメントはありません。最初の一言をどうぞ。



