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RAGとは何をしているのか

基礎約7分
RAGとは何をしているのか

RAGとは、答える前に資料をめくるやり方

RAG(質問に答える前に、社内の資料を探して読ませるやり方)とは、会話するAIに社内の決まりや手順をその場で確かめさせてから答えさせる方法です。先に答えを作ってから後づけで理由を探すのではありません。まず資料を探し、その内容に寄せて答えます。

仕事でたとえると、新しく入った人に「この申請はどう出すのですか」と聞かれた場面に近いです。何も見ずに記憶だけで答える人もいますが、それだと古いやり方を話してしまうことがあります。ていねいな人は、引き継ぎ書や社内の手順書を開いて確認してから答えます。RAGは、その「確認してから答える」を機械でやるイメージです。

ここで大事なのは、AIが会社のことを全部わかるようになるわけではない、という点です。RAGがしているのは、会社そのものを理解することではありません。質問に関係ありそうな紙をすばやく探して、答えの下書きに使うことです。だから、もとの資料が古い、ばらばら、書き方があいまい、という状態では、答えも不安定になります。

RAGは裏で何をしているのか

最初にやっていることは、質問の意味をつかむことです。たとえば「休みの届けはいつまでですか」と聞かれたら、「休み」「届け」「締め切り」といった要点を見ます。ただし、言葉が一字一句同じ資料だけを探しているわけではありません。言い方が少し違っても、近い内容を探そうとします。

その次に、社内資料の中から、関係ありそうな部分をいくつか拾います。ここで重要なのは、資料があらかじめ見つけやすい大きさに分けられていることです。分厚い規程を一冊まるごと読むのではなく、見出しごと、話題ごとに短く区切っておきます。すると、「この質問にはこの段落が近い」と選びやすくなります。

拾った部分がそろったら、AIはその抜き出しを手元に置いて答えをまとめます。つまり、AIが自由に思いつく範囲を広げるのではなく、今見つかった資料の範囲に答えをしぼるのです。これによって、もっともらしい作り話を減らしやすくなります。

最後に、答えといっしょに「どの資料を見たか」を返せる形にすることが多いです。これはとても大切です。人が確認できるからです。もし関係する資料が見つからないなら、「見つかりませんでした」と返すほうが安全です。RAGは、何でも答えられる魔法ではありません。見つからないときに、見つからないと言える仕組みまで含めて考える必要があります。

うまく動かす前に、何をそろえるか

RAGを始めるとき、いちばん先に決めるべきことは「何の質問に答えさせたいか」です。ここを広げすぎると失敗しやすくなります。向いているのは、社内で何度も聞かれ、答えが資料に書いてあり、最新版が決まっているものです。たとえば申請の流れ、よくある問い合わせへの案内、社内ルールの確認などです。

次に必要なのは、もとになる資料の整理です。AIに入れる前に、人が読んでも迷わない状態に近づけます。RAGは、散らかった棚からも一応は探せますが、探し間違いが増えます。特に「同じことが別の場所に少しずつ書かれている」「古い版が残っている」「誰が直す資料かわからない」は危険です。

  • 最新版がどれか、ひと目でわかるようにする
  • 一つの決まりを、なるべく一つの場所にまとめる
  • 資料名だけでなく、作った部署や見直し時期もわかるようにする
  • 写真だけの資料より、文字として読める資料を優先する

資料の形も大事です。画像だけの文書や、手書きのメモの写真は、内容を取りこぼしやすくなります。見出しがなく、長文がだらだら続く資料も不利です。人が読みやすい資料は、たいてい機械にとっても扱いやすくなります。ですから、RAGの準備とは、特別な機械の話というより、引き継ぎ書を整える仕事に近いのです。

さらに、「誰向けの答えか」も決めておくとぶれにくくなります。社員向けなのか、管理者向けなのか、社外向けなのかで、同じ資料からでも答え方は変わります。RAGは資料を探す仕組みですが、答える相手まで自動で察してくれるとは限りません。最初から使う場面をしぼるほうが成功しやすいです。

つまずきやすい場所と、やってはいけないこと

よくあるつまずきは、「資料が多ければ多いほど良い」と考えてしまうことです。実際には逆で、いらない資料や古い資料が混ざるほど、迷いやすくなります。人でも、古い手順書と新しい手順書が同じ棚にあれば混乱します。RAGも同じです。まず量より整頓です。

次のつまずきは、「答えが変ならAIが悪い」と見てしまうことです。もちろん仕組みの調整が必要な場合もありますが、根本の原因は資料側にあることが少なくありません。元の規程があいまい、言い回しが部署ごとに違う、例外が追記だけで残っている。こうしたゆれをそのまま映してしまいます。だから、試すたびに資料へ戻って直す姿勢が大切です。

もう一つ重要なのは、見せてよい情報の線引きです。人事の話、取引先との約束、個人の情報など、だれでも見てよいとは限らない資料があります。RAGは便利ですが、入れたものを何でも同じように使ってよいわけではありません。だれに、どの資料まで見せるのかを先に決めてから進める必要があります。

  • 古い資料と新しい資料を一緒に入れたまま放置する
  • 答えの例文だけを増やし、元の規程や手順を入れない
  • 出どころを見せず、答えだけをそのまま信じさせる
  • 間違いを直す担当者を決めないまま始める

また、質問する側にも工夫がいります。「これどうなっていましたっけ」のように短すぎる聞き方では、必要な資料が絞れないことがあります。どの場面の話か、誰が使うのか、何をしたいのかを添えるだけで、答えは安定しやすくなります。RAGは万能ではありませんが、聞き方と資料の整え方をそろえると強くなる仕組みです。

導入は、小さく始めて確かめる

最初から全社で使えるものを目指さないほうが安全です。まずは、一つの部門で何度も起きる質問を選びます。たとえば、申請の出し方、社内の持ち物ルール、窓口の案内などです。質問の答えが、ほぼ社内資料で決まる仕事が向いています。人の気持ちへの配慮や、複雑な判断が多い仕事は、最初の題材としては重すぎます。

次に、実際に現場で出た質問を集めます。思いつきの質問ではなく、普段ほんとうに聞かれている内容が大事です。そして、その質問に人が正式な資料だけを使って答えたらどうなるかを見ます。この比べる相手があると、RAGの答えがどこでずれるかを見つけやすくなります。

試したあとに見るべき点は、派手さではありません。答えが速いかよりも、根拠があるか、古い資料を拾っていないか、見つからないときに無理に答えていないかを見ます。ここでずれがあれば、資料の直し、資料の分け方の見直し、質問の仕方の案内、のどこに戻るべきかを決めます。RAGづくりは、一度作って終わりではなく、運用の形を整えていく仕事です。

そして最後に、だれが面倒を見るのかを決めます。資料を直す人。質問の集まり方を見る人。使う人からの困りごとを受ける人。この役目があいまいだと、最初だけ動いてすぐ古くなります。便利な仕組みほど、裏側で世話をする人が必要です。

まとめ

RAGは、AIを賢く見せる飾りではありません。社内にある正式な情報を、必要なときに引っぱり出して、答えの下書きに使う仕組みです。だから成功のかぎは、機械の難しい話より、資料の整理と運用の決めごとにあります。

明日やることは、まず小さく、具体的に決めることです。

  • 社内で何度も聞かれる質問を一つ選ぶ
  • その答えのもとになる正式な資料だけを集め、古いものを分ける
  • 資料を文字で読める形にし、見出しや最新版がわかるようにする
  • 実際の質問で試し、出どころを確認しながら答えを見直す
  • 間違いを直す担当者と、見つからないときの相談先を決める

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